人身売買の変遷

日本における人身売買

人身売買の受け入れ大国 日本の背景

日本では1980年以降、日本の経済発展を目指してさまざまな国からの移住労働者を受け入れました。
日本に来て今より良い生活をしたい、家族を助けたいと思う途上国の人々のなかでも特に女性たちを日本に呼び寄せ、渡航費として多額の借金を背負わせて、性風俗産業など、望んでいない、または約束とは違う仕事をさせる、そして逃げられない場所で働かせる、このような人身売買のケースが続きました。
そして日本は海外から人身売買被害者を数多く受け入れている「人身売買の受け入れ大国」と呼ばれました。
国際社会・それまで草の根で日本のなかで被害者支援を行ってきた国内NGO等から非難を受け続け、ようやく2004年から日本は国として人身売買問題に対しての取り組みを始めました。

入国審査の強化や店舗の摘発、特に刑法に人身売買罪という明確な犯罪定義を示したことにより人身売買被害者数は激減しました。
人身売買被害者数の変遷グラフ(参照:2014年2月発行「警察白書」)

国家政策後の新たな課題

そうした取り組みにより、その後、人身売買問題は形をかえていきました。まず取り締まり強化に伴い、人身売買が取り締まりの手が届かない水面下で起き始めたということです。
上記表には2013年度の被害者数は17人とありますが、これは政府が人身売買被害者として認定した人数のことで、現在日本では約54,000人の被害者がいると推測しているNGOもあります(NPO法人ライトハウスhttp://lhj.jp/menu04/より。2014年時点)。また外国籍女性の入国が難しくなったことから、中には日本人女性がターゲットとされるケースも増えてきつつあります。
そして、かつて人身売買被害にあった方々の二次被害の問題があります。
人身売買被害者と認定された女性たちに対して、日本政府の基本的な政策としては「帰国させる」のみです。

一度性風俗産業で働いてしまった故に、故郷に帰ることができない女性たちもいます。また、日本人男性と出会い、中には結婚し日本で子どもを産んだ女性の場合、DV等の被害に遭うケースが後を絶たないにもかかわらず、こうした外国籍女性たちへの支援は不十分です。
また帰国した女性や子どもも、日本での経験から、自分を肯定することが難しく、次の人身売買のサイクルに巻き込まれやすい立場となります。貧困や社会的な偏見、働く場所の欠如や健康面での課題等、いくつもの負の問題を一人で背負わなくてはならないケースも少なくありません。
日本政府の対応として、加害者への処罰や入国審査への取り締まり強化が徐々に確立できてきたものの被害にあった方々への支援、特にアフターケアはいまもなお、追いついていない状況です。